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ありけんエッセイ集


有田健太郎のエッセイコーナーです
by ak_essay
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君の町、僕の町

最近は改札を抜けると立ち止まり、上を見るんだ。
つばくろ(ツバメ)の雛が日に日に大きくなっていて、その動作がたまらない。


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つばくろ夫妻は今年4月にこの改札へ戻ってきて、早々と巣を作って卵を温めていた。
だけどある時期に巣ごと壊れてしまい、なんにもなくなってしまったんだ。
残念に思っていたのだけど、やつらはまたせっせと巣を作り再び卵を温めはじめた。
長い間巣に変化がなくて、親ともども死んだと思っていたから、巣に小さな5つの顔が並んだ時はほんとに嬉しかったよ。


君の町、僕の町_e0071652_23554270.jpg



そうなると駅員はすぐに巣の下に板を敷いてやり、フンが人に落ちないようにしてやるんだ。
今年に限ってはツバメからの伝言まで掲示してある。

喜んでるのは僕らだけではないようで、人たちも足を止めてそれぞれ思い思いの顔をしている。
たまたま僕の側を新人の駅員が通ったので、「おい、おい!」と呼び止め。
巣を指さして「グー!」ってやったら、なんだこいつって顔をされたよ。


君の町、僕の町_e0071652_020777.jpg



最近駅からは、ほとんどCコースで帰る。
Cコースはちょいと遠回りになるけど、5、6分程川沿いを通るコースなんだ。
畑と民家を抜ける細道が好きで、今はあじさいやツツジがきれいに咲いている。

川では、こちらも産卵を終えたばかりのコイ達がゆらゆら泳いでいる。
じーっと見ていると、ナマズやカメやカジカなども発見してしまい、すぐに時間が経ってしまうので注意が必要だ。

家に着いてしばらくして、コンビニに向かう途中。
ツバメの巣が半分壊れて、雛が3羽、地面にうずくまっているのを発見した。

半分壊れた巣には、2羽の雛が今にも落ちそうになって固まっているんだ。

欠陥住宅だ。

ここらでは田んぼがなくて、巣を作るしっかりとした材料が少ないのだろう。


君の町、僕の町_e0071652_0355860.jpg



ここらはネコが多いので、とりあへずそこらへんにあった空き缶に雛を入れ、家からいいサイズの小箱を持ってきた。
ちびツバメは、外にフンをするので箱が深すぎてもいかんしね。

どこぞの軒先から貸りてきた(勝手に)キャタツに上り、ガムテープで箱を取り付けた。

雛を手に乗せるとやわらかく暖かく震えていて、こんなに小さいんだ。
なんだか懐かしい感覚。
パタパタと羽ばたこうとするがまだまだ飛べるわけなく、半壊の巣に残った雛も合わせて5羽が箱に入れられた。

親ツバメは終始「ヒュン!ヒュン!」と警戒の声を出して周りを飛んでいる。

「大丈夫かねぇ〜…」「そうですわねぇ〜…」「おかあさんツバメ、もうちょっとちゃんとした家をつくんないとねぇ〜」とか。
通りすがりの親子や近所のおばあちゃんも立ち止まり、それぞれ心配そうに勝手に思いを語り合っている。

ちゃんと親ツバメはエサをあげるかな…。
こんな箱で大丈夫かな…。

かなり気にはなってるけど、もうしょうがないでしょう。
がんばってくれ。


梅雨も後半の、蒸し暑い曇り空。
見上げればたくさんの電線、虫や鳥たちが飛んでいる。

今度は鳥たちが見下ろすよ。
たくさんのビルや家、川が流れ、やっぱり電線。車や人や犬が行き交い、草木が緑。

それは当たり前の世界で。

今日はそんな世界のちょいとした関わり合いやったね。


この町はいい町だよ。
「君もいるし、僕もいる」



【  おわり  】




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【ちゃんと5匹いたよ】
毎日の通りすがり、いつも3羽くらいしか顔を出してなくて何羽か死んだのかなと思っていたのだけど。
数日後、これを見て驚いたよ。
よかった(笑)

by ak_essay | 2006-06-27 00:12
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